ミステリー小説で「探偵より先に謎を解こう」チャレンジ。
その2作目がこちら、『ある閉ざされた雪の山荘で』。(最初のチャレンジはこちら)。
『ある閉ざされた雪の山荘で』(東野 圭吾) 製品詳細 講談社
1度限りの大トリック! 劇中の殺人は真実か? 俳優志願の男女7人、殺人劇の恐怖の結末。 早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した男女7名。これから舞台稽古が始まる。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇だ。だが、1人また1人と現実に仲間が消えていくにつれ、彼らの間に疑惑が生まれた。はたしてこれは本当に芝居なのか? 驚愕の終幕が読者を待っている!
本来なら、謎解きパートに入る前に一度読むのを止めて、何度も読み返しながら自分で推理するつもりだった。
……だったのだが、うっかり謎解きパートに突入してしまったので、今回は普通に感想を書くことにする。
とはいえ、読むときは謎解きする気満々だったので、事件パートも「これはどういう意図なんだ?」と考察しながら読んでいた。ずっと引っかかっていたのが 「そもそも本当に殺人は起きているのか?」 という点。ミステリーなのだから人が死んでいないと成立しないだろう、と結論づけて “殺人は起こっている前提” で推理を進めたのだが……
いや〜、大外れだった。
たしかに、実際に殺人が起こっているにしては妙な点が多かった。たとえば「古井戸に被害者の服の糸が残っていた」という描写。“井戸に落としたのでは?” という話になっていたが、そもそも舞台は本物の密室ではない。犯人は密室に縛られる必要がなく、夜のうちに死体を車か何かでどこかへ運び出せばいい話だ。
だから「実際には殺人は起きていないのでは?」という考えも頭にはよぎった。しかし、読者視点では犯行の様子がしっかり描かれていたので、その可能性は消した。……まさか、その描写そのものが 本物の殺人だと思い込ませるための演技 だったとは。登場人物全員が舞台俳優という設定が、ここで効いてくるのも鮮やかすぎる。そうか、あの描写は地の文ではなく「誰かが見た光景」だったのか。
いや〜、まったく見抜けなかった。脱帽です。